激変するIT業界からの転職先

激変するIT業界からの転職先

IT業界の転職先としては、これまで同業他社内でしかできないというのが常識でした。しかし、ここ最近になって、他業種への転職が拡大しています。そんな加熱化するIT人材獲得合戦について、お伝えします。

製造業

電機メーカーがIT業界からの大量採用に動いている、というのはここ1年くらいで人材業界のなかでは当然になっています。

 

IOT(モノのインターネット)が広がりつつある昨今、IT人材の不足に危機感を募らせているのが製造業です。2015年あたりから、数十人規模で人材確保をもくろむ大手も出てきています。

 

調査会社の米IHS社は、2020年には現在の倍以上、世界で500億個を超えるデバイスがネットとつながると見込んでいます。あらゆる機器から集まるビッグデータをどのように活用し、新たな製品やサービスにつなげるのか、頭を抱えているメーカーが続出しています。

 

センサー、通信、データ分析の技術を既存製品に活用できる人材は社内に乏しいし、新人を育てる余裕もありません。そこで、IT業界で経験を積んできたエンジニアということです。「理想的な条件でなくても多少は目をつむって採用している。目標人数を確保するのが先決。」とメーカーの採用担当者は語ります。

自動車業界

自動運転のもなかば本格化してきている昨今、運転を制御するためのプログラムを開発できるIT人材が求められています。トヨタ自動車もシリコンバレーにAIの研究所を設立するほどの熱の入れようです。

金融

フィンテックに本腰を入れ始めたメガバンクを始め、IT業界で培われた情報技術を求める流れが活発化しています。

一般企業の社内システム担当として

IT企業以外の一般企業の経営者も、ITの重要性にさすが気づいてきました。社内システムの整備や、WEBマーケティングへの本格的な取り組みのため、エンジニアをIT業界から獲得する動きが大きくなっています。

第3のルートとは?

これまでITエンジニアのキャリアの選択肢は限られていました。今の会社で働き続ける以外は、同業他社への転職か、企業に挑戦するかくらいしかありませんでした。

 

そこへ異業種が人材確保に本腰を入れ始めたことで、業種の垣根を超えた転職という「第3のルート」が開かれたと言われています。

他業界で力を発揮したいエンジニア側の希望も

あるキャリアコンサルタントによると、「IT業界の中には、ものづくりに携わりたいという人が一定数います。そういう人材が他業界に移動している。」とのことです。

 

また、携帯の大手キャリアは成熟してしまって、エンジニアにとっては面白みのない業界になっています。そのような通信技術をもつエンジニアが、自動車メーカーや電子部品会社に流れています。

過熱化するエンジニア人材紹介業界

IT業界から人材が流出しているといっても、IT業界自体が人材が足りている業界ではありません。なので、人材紹介会社が受ける成功報酬も跳ね上がっていて、他の職種なら年収の2割程度のところ、IT人材の場合は、7割以上もざらという状況です。

 

転職して年収は上がっているのか?

結論からいうと、年収はあまり上がっていません。というのは、転職先の非IT企業は年功的な賃金体系が強いので、他の社員に比べてIT人材だけ特別扱いというのは難しいためです。

 

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、大企業の製造業の所定内給与は35.2万円(14年)。情報サービス業が35.1万円。インターネット付随サービス業が31.9万円となっていて、ほとんど変わらないのです。

 

ただ、マイナンバー制度により、高まる個人情報管理の重要性に対応する、高度なセキュリティ技術をもったエンジニアは例外的なケースですが、年収2,000万?3,000万円を稼ぐ人材もいます。

 

このあたりは、企業側が自分たちの人事・賃金体系の見直しが今後期待されています。